設立趣意書

一般社団法人 抗認知症薬の適量処方を実現する会

設立趣意書

長尾和宏
長尾和宏

我が国は、2025年にいわゆる団塊の世代が後期高齢者となり、国民の4人に1人が高齢者という未曽有の超高齢社会を迎えます。それに伴い認知症の人は予想を大きく上回る勢いで増加しており、2012年の調査では462万人、予備軍ともいわれる軽度認知障害の400万人とあわせて800万人を超えています。このような状況の中、認知症医療・介護は多くの課題を抱えています。認知症医療が抱える課題の一つとして、現場の医師が抗認知症薬(現在、4種類が保険適応)を不必要に増量するよう強いられているという問題が指摘されています。

抗認知症薬を処方する際は最少量より開始し、一定期間毎に必ず初期量の2~4倍量まで増量しなければならないことが添付文書に記載されています。それより少ない量を投与すると、適用外使用として処方した医師がペナルテイーを受ける可能性があります。実際に医師が患者を診て適量投与と考えて減らしたにも関わらず、保険外診療として診療報酬がカットされた事例が多く報告されています。認知症の人は身長、体重、身体状況、さらに薬剤への反応性に大きな個人差があります。また、抗認知症薬により惹起された副作用(易怒、歩行障害、嘔吐など)は決して稀ではないことが医療・介護現場から数多く報告されています。そしてこれらの副作用により、介護者は更なる負担増を強いられるという悪循環にあります。つまり“過剰投与による認知症”がつくられているという面もあり、大きな国家的損失となっています。

そもそもネットワーク臓器である脳の神経伝達物質に作用する薬剤こそ、さじ加減と言われるように個別性への細かな配慮が必要です。しかしこうした個別性や至適用量を無視した一律の投与基準は認知症の人の尊厳を損ねています。事実上の増量強制は認知症の人が住み慣れた地域で楽しく生活する権利を著しく損ねており、地域包括ケアの観点からも早急に改善すべきであると考えます。

この度、私どもは一般社団法人抗認知症薬の適量処方を実現する会を設立することにより、以上の諸問題を幅広く調査、集計、データ化し、日本人の認知症医療・介護に提言をすることを目指します。まずは、抗認知症薬の事実上の増量強制の撤廃と医師の裁量による適量処方の実現に取り組む所存です。調査を通して得られた知見は認知症の人、介護家族、医療機関、介護施設に還元して、認知症の人とその家族の幸福に寄与します。そしてより良い認知症医療・介護の普及、啓発に努めたいと考えます。

平成27年9月11日

一般社団法人 抗認知症薬の適量処方を実現する会
代表理事 長尾 和宏

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